「ODA」とは何ですか?

 「政府開発援助」のことです。21世紀になっても未だに貧困にあえぐ発展途上国に援助をすることは、先進国である日本が人道上、行うべきことではありますが問題はそれが日本の国益と外交戦略に基づいて行なわれていない、ということです。
特に中国に対するODAは巨額であるにもかかわらず、国民に対する説明がまったくなく、水面下でこっそり行なわれています。中国はGDPで日本を抜いて世界第2位の経済大国になりました。しかも反日教育を未だにやめない敵性国家です。そのような国になぜ私たちの血税で援助をする必要があるのでしょうか?

ODAには
?有償援助(円借款・円による貸付)
?無償援助(贈与)
?技術支援(無償)
の3種類があります。

日本のODAの特徴は円借款が「アンタイドローン」であることです。つまり日本が中国の建設プロジェクトに融資をしたとしても、必ずしも日本企業がそのプロジェクトを受注できるわけではありません。
中国は日本の資金を使って自国企業や韓国、アメリカ、ヨーロッパなどの企業に仕事を振ることができるのです。日本企業がプロジェクトに関わるためには中国政府の要人に取り入るしかありません。こんな奇妙な融資制度をやっているのはOECD(経済協力機構)の中でも日本だけです。

中国に対するODAは改革開放政策がスタートした1978年に始まったのですから既に30年以上になり、総額3兆6千億円にものぼります。中国が世界各国から借りている公的援助の約60%が日本からのものであり、日本は世界最大の中国支援国なのです。

対中ODAは本当に終了したのですか?

 毎日新聞は2011年4月20日の社説で「対中ODAのほとんどを占めてきた円借款は07年度で新規供与を終えている」と書いています。しかしこれは事実ではありません。国民の批判をかわすために形を変えただけです。2007年に終了したのは円借款だけで、無償援助(09年度は13億円)と技術協力(09年度は33億円)は今も継続中です。

また中国向け援助=ODAというわけではありません。1979年から始まった「資源開発ローン」はODAと金利や条件もほとんど変わらない、「第二のODA」と呼べるものです。日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)がやっていた「資源開発ローン」は現在は廃止されているものの、総額3兆円を中国に援助していました。

また民主党政権下で、これまでならODAとして予算がついていた各種のプロジェクトが各省の単独予算に割り振られるようになりました。例えば環境省の「中国環境対策」に6億4千8百万円、文部科学省の「中国外国人留学生受け入れ」に10億円、財務省系列の国際協力銀行の「中国製鉄所支援」に34億円の予算がついています。これらはいずれも形を変えたODAと言えるでしょう。


「日本は中国に戦争賠償金を払っていないのだから、援助するのは当然だ」というのは本当ですか?

 テレビや新聞に登場して中国への謝罪を語る評論家や学者たちは、対中ODAに対する正しい認識を国民が持つのを邪魔していると言っても過言ではないでしょう。1972年9月、田中角栄首相と周恩来総理との間で日中共同声明が締結されました。その第5項には「中華人民共和国政府は中日両国人民の友好のために日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」と書かれているからです。

大東亜戦争の敗北により当時、中国全土や満州・台湾にあった日本の在外資産は中華民国政府に接取されました。総額約20兆円のうち、台湾へ逃げた中華民国政府が3兆円を取り、残り17兆円はのちに建国した中華人民共和国のものとなりました。実際に日本と戦ったのは蒋介石の国民党軍であったにもかかわらず、日本の残した膨大な資産のほとんどを戦いもしなかった中国共産党が取ってしまったのです。中国の経済成長は日本が大陸に残してきたインフラ設備とODAによって成し遂げられたものです。

戦後の日本は「侵略戦争の反省」と「日中友好」のためにひたすら中国を援助し続けてきました。しかし、それに対する中国の答は反日教育であり、歴史の捏造であり、東シナ海での不法な海底油田の採掘や尖閣諸島沖での中国漁船による海上保安庁巡視船への体当たりであったという事実を私たちはもっと深刻に考えるべきだと思います。

中国は日本から得たお金で何をしているのですか?

 最近の中国は新幹線など、国内の鉄道網の整備に余念がありません。鉄道建設を担当しているのは中国の鉄道部であり、資金のほとんどは外資です。その内訳は日本の円借款(ODA)が30%、日本とアメリカが出資している世界銀行とアジア開発銀行の2行からが50%、つまりジャパンマネーが80%を占めているそうです。

中国は世界からの援助によって毎年のように大規模な鉄道建設や道路開発を行なっています。しかしアメリカや台湾がこれらの施設が軍事用に転用されることに懸念を示したので、日本政府も2000年以後は中国の鉄道や道路、空港、港湾などの分野にはODAを行なわないことを政府決定しています。
しかし2003年、湖北省の宜昌と重慶市の万州を結ぶ宜万鉄道建設プロジェクトにアジア開発銀行から550億円という驚くべき金額の融資が行なわれることが決定しました。アジア開発銀行の当時の千野忠男総裁が承認したものです。つまり、ODAで援助することは中止されたはずの中国の交通プロジェクトに、日本の財務官僚の牛耳るアジア開発銀行からは、逆にどんどん迂回融資が行なわれているのです。

アジア開発銀行の中国向け援助でもっとも大きな比重を占めているのが交通インフラ分野への支援で、これは全体の50%を超えています。第2位がエネルギー分野への援助で20%弱です。どちらも中国の経済成長をバックアップする開発最優先の援助と言えるでしょう。

「アジア開発銀行」とは何ですか?

 1966年、日本とアメリカのイニシアティブでできた銀行です。アジア太平洋地域の国に援助するために設立され、本部はマニラにあります。
加盟国・地域は67で、そのうち48カ国がアジア太平洋地域に属しています。
業務内容は借款の供与、贈与、技術支援、担保で、ODAとほとんど中身は変わりません。

アジア開発銀行の政策は加盟国の代表各1名で構成される総務会で決められます。総務会では12人の理事と総裁が選出されます。総裁の任期は5年で強い権限を持っているのですが、初代の渡辺武氏から現在の黒田東彦氏まで、全員が日本の財務省(旧大蔵省)の高官たちです。
アジア開発銀行がいかに日本のカネとヒトで支えられてるか、がよく分かります。アジア開発銀行に中国が加盟したのは1986年です。以後、2010年暮れまでに中国がアジア開発銀行から受けた援助の総額はなんと220億ドル(約1兆8千億円)にのぼります。

黒田東彦現総裁は公の場で「中国は覇権主義的ではない」と発言するほどの親中派で、東アジア共同体にも賛成しています。
その彼が最近、「大規模で野心的」と自画自賛しているのが「中央アジアハイウェイ計画」です。
新疆ウイグル自治区のウルムチから中央アジアにかけて近代的な高速道路、鉄道、空港などを建設しようというもので、今後10年間で187億ドル(約1兆5500億円)の投資が見込まれています。
しかし、もしこの「夢のプロジェクト」が完成したら、どうなるのでしょうか? 
このプロジェクトに関わる国はロシア、中国以外はモンゴル、アフガニスタン、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンなどの、いずれも小国です。資本力も技術力もないこれ轤フ国はやがて中国に経済的に従属することになるでしょう。
中央アジアは資源の宝庫ですから、交通網が整備されれば中国は必ず資源の確保に手を伸ばすでしょう。そして中国の影響下に置かれた国々が日本の国連常任理事国入りに反対するということは十分考えられます。そのようなプロジェクトを日本人である総裁が後押しするというのは信じがたい話です。

「日中省エネ環境基金」とは何ですか?

 2006年、安倍前首相の訪中をきっかけに「日中省エネ・環境総合フォーラム」という会議が開かれるようになりました。以後、毎年のようにこの会議は開かれており、尖閣問題で関係が悪化していた去年もこれは中止されませんでした。この会議で日本企業は中国が力を入れ始めた省エネと環境分野での受注を求め、中国側はODA(円借款)の復活を求めました。しかし日本国民の反発が根強いので安倍、麻生政権下ではODAに代わる援助スタイルを模索していました。

しかし民主党政権が誕生し、鳩山前首相が環境援助と遺棄化学兵器処理にゴーサインを出したことで状況は一変しました。2009年11月に中国側の提案により「日中省エネ環境基金」が設立されました。この基金はODAとは違い、中国政府も日本と同じように出資するとされていますが、ここにもトリックがあります。中国向け援助に反対する日本国民を説得し、従来の「アンタイドローン」に不満を持つ日本企業をも説得するために、これはODAとは性格の違うものだというポーズを取っているのです。しかし基金の目的はあくまでも「中国の環境対策」であって、日本の環境対策には1円たりとも使われることはないのです。

民主党政権はODAにまつわる数々の疑惑に答えるどころか、世論の動向をうかがいながら援助再開に舵を切るタイミングを狙っています。私たちの血税が不透明な中国援助に使われることのないように、東日本大震災の復興資金に回されるべき財源が知らぬ間に中国に流れることのないように、私たちはしっかりと監視して行かなければなりません。

参考文献:青木直人「中国ODA7兆円の闇」(雑誌「WILL」7月緊急特大号)


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