「国防動員法」とは何ですか?

 「国防動員法」は正式には「中華人民共和国国防動員法」と言い、全14章72条という長いものです。2010年2月の全国人民大会で成立し、7月1日に施行されました。簡単に言えば「中国の主権、国家の統一、領土の保全と安全が脅かされた時」には「国家内にある人と物のすべて」がこの法律を根拠に動員・徴用できる、というものです。ですから日本に住む中国人約68万人はもしこの法律が発令されれば中国政府の指揮の下、日本の重要拠点を占拠したり、交通機関を混乱させたり、日本人に攻撃を仕掛けてくることも想定されるわけです。
なぜ今、このような立法措置が必要だったのでしょうか? 条文を読むと「中国の主権を脅かす事態」とはつまり台湾、チベット、ウイグルなどの独立運動や尖閣諸島問題、国内テロなどを想定していることが分かります。

この法律が施行された2ヶ月後の9月上旬に尖閣諸島沖での中国漁船による海上保安庁巡視艇への体当たり事件が起きています。これは偶然なのでしょうか? あの漁船の船長は漁民ではなく、海軍の軍人ではないかと言われています。しかし船長を釈放してしまったために真相は闇の中となってしまいました。これから似たような事件が起こり、日本が主権を行使しようとした場合、中国が国防動員法を発令する可能性も否定できません。そうなった場合、中国に進出している日系企業も動員対象となります。日系企業が中国に設立した工場も、日本人ビジネスマンの個人財産も徴用され、もし従わなければ刑事罰を科せられるわけです。なぜこのような重大なニュースをマスコミは報道しないのでしょうか?


「超限戦」とは何ですか?

 戦争とは軍事力の衝突に限らず外交、宣伝、経済、貿易、金融なども国家の存亡に関わるという点で戦争である、という考え方です。中国人民解放軍の二人の空軍大佐が書いた『超限戦 21世紀の「新しい戦争」』(共同通信社、2001年)という本があります。この本はたまたま2001年のアメリカ同時多発テロの前に中国で刊行されたためにテロとの戦いとの関連で話題になりました。しかし、この本はテロとの関連という側面だけでなく、中国の国家戦略を具体的に書いたものとして読むべきだと思います。

この本ではさまざまな「超限戦」の実践例が挙げられています。例えば金融投機家たちが引き起こす「金融戦」。貿易摩擦を利用して相手国に制裁措置を取ったり賠償金を請求する「貿易戦」。相手国に麻薬を流通させて若者の心身を破壊する「麻薬戦」。相手国に拳銃などを流通させて治安を悪化させる「密輸戦」。中国が今、まさにやっているレアアースの禁輸措置やダム建設、森林買収によって水源を確保する「資源戦」。途上国に経済援助をして、その見返りと称して資源を奪う「経済援助戦」。自国本位の国内法を勝手に制定して、それを根拠に相手国を責める「法律戦」。都合が悪くなると「南京大虐殺」「教科書問題」「靖国参拝」などの、いわゆる「歴史問題」を持ちだして日本を思い通りに操ろうとする「心理戦」。つまり、中国が今、やっていることは既にこの本の中で堂々と予告されていたわけです。中国は戦略通りに着々と日本を侵食しているということを私たちは認識しなければなりません。

参考文献:関岡英之『中国を拒否できない日本』(ちくま新書)
     坂東忠信『中国が世界に知られたくない不都合な真実』(青春出版社)




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